媒介契約について【買う人編】2024改定版


今回は媒介契約について解説致します。

3年ほど前に同様の記事を書いたのですが、この問題については、それからもお客様からの質問が大変多く、また、間違った知識が蔓延している様子なので、改訂版として改めて投稿したいと思います。

間違えているのはお客様だけでなく、不動産業者もという点がなかなか悩ましいところです。

不動産業者の営業担当者がこういう事を言います。

「この物件は専属専任媒介だから、うちからしか買えません」

「この家は専任媒介だから、他の会社では案内できません」

これらはいずれも、嘘か間違い、あるいは、コンプライアンス違反です。

騙されないようにしましょう。

というのも、どちらの媒介契約の方式が採用されている場合であっても、売主とこの契約を締結した不動産業者は指定流通機構に登録しなくてはなりません。

登録すると、その流通機構に登録しているすべての不動産業者が情報を閲覧出来る様になります。

そこから情報を得た業者は、掲載した業者に問い合わせて詳しい情報を知ることが出来るため、当然お客様にも紹介出来ます。

ではなぜ、そのようなことを言われる事があるのでしょうか。

その理由は「囲いこみ」です。

売主と媒介契約を結んだ業者の中には、宅建業法を守らずに物件を定められた方法で公開せず、自社で囲いこんでしまう会社があります。

これは売主、買主の両方から報酬(仲介手数料)を得たいからです。

数年前に雑誌でも相当取り上げられましたが、その際には、名前の通った大手企業の殆どが囲いこみを行っていました。記事のお陰で一時期下火になりましたが、最近はまたあからさまです。

私見ですが、ある大手企業などは、すべての物件を囲い込みしているのではないかと感じてしまう程です。

かつての雑誌記事によると、不動産業者の名前をつかって問い合わせをした際に商談中と返答された物件について、30分後に消費者として問い合わせるとその多くがご紹介可能と伝えられたそうです。

囲いこみは多くの場合、法律違反です。

そういう会社で育った社員は、それが当たり前のことと思いこみ、まるで当然のことのように

「この物件は専属専任媒介だから、うちからしか買えません」

「この家は専任媒介だから、他の会社では案内できません」

と言うのです。

どうぞ安心して、信頼の置ける不動産業者に購入の依頼をなさってください。

しかし、これ以上に気をつけなくてはならない点があります。

それは上記の様なことを言う不動産業者だけれど、良い物件だし対応もまずまずだからお願いしてしまおうかと感じてしまう事です。

ちょっとお待ち下さい!法律違反や、コンプライアンス違反をしている業者が、将来あなたを守ってくれるはずがない のではありませんか。

一生に一度かもしれない買い物を、会社の利益のために法を犯すような会社に頼んで大丈夫でしょうか。

うちの会社でしか紹介できない、そんな言葉を聞いた際には、どうぞよくお気をつけくださいませ。

その逆に、お客様から「御社しか持っていない物件の情報はありませんか」と問い合わせを頂くこともありますが、この様な問い合わせは多くの場合、「御社は法律違反をしている会社ですか」という問い合わせと殆ど同じ意味になります。

また、専任媒介契約をしている業者に申し込むと、有利に不動産が購入できるというのも明らかな間違いです。

むしろ、売主と直接つながっている業者に申し込むことは、買主にとっては大きなリスクとなります。

それは、売主と買主の間にひとつの不動産業者しか入らないことになるからです。

利益相反という言葉をご存知でしょうか、売主と買主はまさに利益が相反する立場にあります。

売主は高く売って余計な義務を負いたくないと考えているのに対し、買主は安く買って問題が起こった際には売り主が責任をとってくれるような契約を結びたいと考えているはずです。

よほどの人格者でない限り、その間に入って両者にとっての最善を目指すことは出来ないでしょう。きっと売主と買主が妥協できる接点を探し、うまくまとめてしまおうと考えることでしょう。

金額交渉ひとつとっても、どこまで安くなるかと買主の立場に立って必死で交渉するのと、売主との関係性を重視しながらやんわりと交渉するのでは結果も随分異なるはずです。

それでも金額についてなら一般の方にも分かりやすいものですが、これが契約書の内容になると、一体どちらに有利なのか、多くの方には全くわからないものでしょう。

これから不動産の購入をお考えの方は、その物件の売主が不動産業者とどの様な契約を交わしているか、あまり心配なさらずにご検討くださいませ。

媒介契約について【買う人編】オリジナルバージョンもお読み頂けます。

それでは、また次の投稿にて。

補足:「一般媒介契約」の場合には、売主からお預かりした物件の情報を仲介業者が公開する義務はありませんが、囲い込みをしてまで利益を優先するタイプの業者が、売主に対する縛りの少ない「一般媒介契約」を結んでいる事は無いでしょう。情報の隠匿が合法である事は稀です。