【不動産のヒント】不動産コンサルティングマスターとして 相続税対策の重要性について


今回は、不動産コンサルティングマスターとして、相続税対策の重要性について解説したいと思います。

さて、相続税は、資産を相続する際に発生する税金であり、特に不動産を多く所有する方にとっては大きな負担となります。しかし、適切な対策を講じることで、相続税の負担を軽減し、円滑な資産承継を実現することが可能です。

1. 相続対策の基本
相続対策は単に「節税」だけではなく、以下の3つの要素をバランスよく考えることが重要です。

分割対策:相続人間のトラブルを防ぎ、スムーズに資産を分割する。
納税対策:相続税を支払うための資金を確保する。
節税対策:合法的に相続税の負担を軽減する。
特に不動産を多く所有する方の場合、現金とは違い「分割しづらい」という問題があるため、事前に分割方法を検討することが大切です。

2. 相続税の仕組みと課税対象
相続税は、亡くなった方の財産を相続または遺贈によって取得した際に課される税金です。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
課税遺産総額 = 相続財産の合計額 −(負債 + 基礎控除額)
たとえば、財産総額が1億8,000万円、負債が3,000万円、葬儀費用が300万円、相続人が4人の場合、

課税遺産総額 = 1億8,000万円 − 3,000万円 − 300万円 −(3,000万円 + 600万円 × 4) = 9,300万円
これを各相続人の法定相続分に応じて計算し、相続税額を算出します。

3. 節税の基本戦略


(1) 貸家建設による節税

不動産の相続税評価額は、貸家にすることで下げることができます。たとえば、相続税評価額1億円の土地に5,000万円のアパートを建てた場合、評価額は約50%減少し、税負担が軽減されます。

計算方法は下記のとおりですが、少々難しいので、飛ばしていただいても大丈夫です。
土地の評価額(貸家建付地の評価減)
貸家建付地の評価 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合 × 借家権割合)
建物の評価額(貸家の評価減)
貸家の評価 = 自用の建物評価額 ×(1 − 借家権割合)

(2) 生前贈与の活用
相続時精算課税制度:一定額を贈与した場合でも、相続時にまとめて税額を計算する方式。
暦年贈与:年間110万円以下の贈与は非課税。
生前贈与を計画的に活用することで、相続財産を減らし、税負担を分散できます。

(3) 生命保険の活用
生命保険金には、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。これを利用することで、現金を相続税の支払いに充てつつ、課税対象額を抑えることが可能です。

4. 節税対策のリスクと限界


(1) アパート建設の落とし穴
賃貸経営を目的としない節税のためのアパート建設は、空室リスクや家賃下落のリスクが伴います。また、相続税の評価減が目的であっても、借入金の返済や維持管理のコストがかかるため、慎重な事業計画が必要です。

(2) 借入金を利用した節税の限界
借入金を活用して不動産投資を行うことは、節税効果をもたらしますが、時間の経過とともに借入金が減るため、評価額が上昇し、節税効果が薄れる可能性があります。

5. まとめ
相続税の節税対策は、単なる税負担の軽減だけでなく、資産を次世代に円滑に承継するために必要不可欠です。そのためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

相続対策は「分割対策」「納税対策」「節税対策」の順番で考える
不動産の評価減や生前贈与を活用して課税対象額を抑える
節税目的だけの投資(アパート建設など)は慎重に検討する
納税資金の確保を忘れずに、生命保険などの活用も検討する
専門家(税理士・不動産コンサルタント)と連携し、計画的に対策を進める
相続税の節税対策をしっかり行うことで、将来のトラブルを防ぎ、家族が安心して資産を受け継げる環境を整えることができます。不動産を活用した相続対策を検討している方は、ぜひ専門家に相談することをおすすめ致します。