【音楽図鑑】あたらしい音楽との出会いと別れ


35年ほど前、クラスメイトが私に掛けてくれたヘッドフォンから流れてきたのは、その頃黎明期を迎えたばかりのノイズミュージックでした。

どの曲だったか覚えていませんが、後にも先にも、あれほど強烈な音楽との出会いはありませんでした。

彼は、そのバンドのフロントマンである秋田昌美氏の猫を飼い、ライターとしてSTUDIOVOICE等にも寄稿していました。

彼の部屋に行った際、レコードやCDの量に驚かされました。夜は、隙間を探して寝ました。

私は猫アレルギーというわけではなかったのですが、翌朝は鼻水が止まりませんでした。

貸していたお金は、翌朝、数枚のレコードやCDとなり戻ってきました。

彼はその後、都内有数のマニアックなレコードショップ(Kurara Audio Arts)を運営していたそうです。

昨日は彼のお通夜でした。

祭場への坂道をのぼりながら、思い出したことがありました。

その時私が聴いていたのは、当時彼から「そんなの聞いているの!」と笑われた日本のロックバンドの曲だったこと。

自分も相変わらずだなと思って、少し、にやけてしまいました。

彼の祭壇の手前には、マニアックなレコードが並べられていました。

それいいね、そんなの持ってるの、それはちょっとなんて、彼と会話しました。

さようなら野界典靖くん。

君が亡くなったことを教えてくれたのは、世界一のノイズミュージシャンからのライン通話でした。

私も少しは成長しているでしょう。