――プロが教える、後悔しないためのチェックポイント
不動産ブログ|住宅購入をご検討中の方へ
「日当たりも間取りも申し分ないのに、なぜか価格が相場よりお手頃」——そうした物件に出会ったとき、理由の一つが「擁壁のある土地」であることも少なくありません。擁壁は、高低差のある宅地を土台から支える大切な構造物ですが、その状態や適法性は見落とされがちです。契約後に修繕費用がかさんだり、資産価値に影響が出たりすることもあるため、購入前の確認がとても重要になります。この記事では、不動産の現場に立つ立場から、家探しの際にぜひ知っておいていただきたい擁壁の基礎知識と、購入前のチェックポイントを分かりやすく解説します。
1. そもそも「擁壁」とは?なぜ物件探しで注目すべきか
擁壁とは、高低差のある土地で土砂の崩落を防ぐために設置される構造物です。傾斜地の多い住宅地や、造成によって生まれた高低差のある区画では、擁壁がその土地そのものを「支えている」といっても過言ではありません。つまり、擁壁の健全性は、そのまま宅地としての安全性や資産価値に直結します。
一方で、擁壁は建物のように住宅ローンの審査で細かく確認されることは少なく、日常生活でも意識しにくい存在です。だからこそ、物件を選ぶ段階でご自身の目と、必要に応じて専門家の目でしっかり確認しておくことが大切になります。
2. 擁壁にはいくつかの種類があり、「危険度」に差がある
国土交通省の「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」では、擁壁は構造によって7つのタイプに分類されています。このうち①〜③は比較的健全性を確認しやすいタイプ、④〜⑦は倒壊の危険度が高いタイプとされています。

図2|擁壁の7分類と倒壊危険度の目安(国土交通省の分類に基づき作成)
特に、モルタルを使わず石を積んだだけの「空石積み擁壁」や、既存の擁壁の上に後から積み増しをした「増積み擁壁」は、施工時期や施工者によって強度にばらつきが出やすく、見た目だけでは判断が難しいケースもあります。内見の際に、目の前の擁壁がどのタイプに近いかをざっと確認しておくだけでも、後の専門家への相談がスムーズになります。
3. 法律も「擁壁の安全性」を厳しく見てきた歴史がある
擁壁の技術基準は、過去の災害を教訓に見直されてきました。平成7年の阪神淡路大震災では擁壁の倒壊による被害が数多く報告され、これを受けて平成12年6月1日に技術基準が改正されています。
現在の建築基準法施行令第142条では、擁壁について次のような基準が定められています。
- 鉄筋コンクリート造など、腐食しない材料を用いること
- 石造の場合はコンクリートの裏込めを行い、石材同士を十分に結合すること
- 擁壁背面の水はけを良くするため、水抜き穴を設け、砂利を詰めること
さらに令和7年6月1日に施行された盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)では、擁壁について「鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造またはそれ以上」の基準に適合することが明確に求められるようになりました。法律の基準自体が、より安全性の高い構造を求める方向へと強化されてきているのです。こうした背景を知っておくと、「古い擁壁ほど、現行基準を満たしていない可能性がある」という視点を持って物件を見ることができます。
4. でここを見る!危険な擁壁のサインチェックリスト
専門的な調査をしなくても、いくつかのポイントはご自身の目で確認することができます。

図1|擁壁の断面模式図でわかる「危険サイン」チェックポイント
| 水抜き穴 雨天後でも水がまったく出ていない、上段の穴からは出るのに下段からは出ない、穴が土や植物でふさがっている、そもそも水抜き穴が見当たらない——といった状態は、擁壁内部に水が滞留しているサインの可能性があります。 |
| 天端(てんば)の排水溝 擁壁の上部にU字溝などの排水設備があるか、そこに水が滞留せずきちんと流れているかも重要なチェックポイントです。 |
| ひび割れ・ずれ/はらみ・膨張 表面のひび割れそのものよりも「ひびを境に面がずれている」状態は構造的な変形の可能性を示します。壁面が弓なりに膨らんで見える場合も、土圧に耐えきれず変形が進行しているサインです。 |
| 表面の異常な湿り気・土砂の堆積・破損や陥没 擁壁の表面が常に湿っている、土砂がたまっている、部分的に欠けたり陥没穴ができていたりする場合も、経年劣化や排水不良のサインとして見逃せません。 |
これらは一つ当てはまるからといって即「危険」と判断するものではありませんが、複数の兆候が重なっている場合は、専門家による詳しい調査をおすすめします。
5. 資料があったら嬉しい 念のため「役所」で確認したい3つの窓口
外観だけでは分からない「その擁壁が適法に造られ、検査を受けているか」は、役所への確認で把握できます。具体的には、次の3つの窓口で工事の許認可と完了検査の記録を確認します。
- 建築確認担当課……工作物としての確認申請・検査済証の有無
- 宅地開発担当課……宅地造成許可・完了検査の有無
- 都市計画担当課……開発許可・完了検査の有無
図3|契約前に必ず確認したい「3つの行政窓口」フロー
ただし擁壁に関する資料はごく最近のものを除き殆ど残っていません。「許可は取得しているが、完了検査を受けていない」擁壁も多く、完了検査の記録がない場合、その擁壁は行政上「基準どおりに完成したことが確認されていない」状態にあると言えます。
6. 「検査済証がない」=即NGではないが、丁寧な確認を
古い擁壁の中には、検査済証が残っていないものも少なくありません。それだけで即座に「危険」「購入すべきでない」ということではありませんが、次のような対応を組み合わせることで、リスクを抑えた判断がしやすくなります。
- 図1のチェックポイントで外観の異常の有無を確認する
- 可能であれば擁壁の築造時期や施工経緯について売主に確認する
- 宅地建物取引士による現況の確認や、必要に応じて建築士等の専門家調査を依頼する
- 重要事項説明で、擁壁に関する告知内容(過去の補修履歴、越境の有無など)をしっかり確認する
なお、擁壁の状態について売主が異常を認識していながら告知しない場合、告知義務違反となる可能性があります。気になる点は遠慮なく仲介の担当者に質問し、書面で確認する習慣を持つことをおすすめします。
7. まとめ
擁壁は、宅地の安全性を土台から支える存在でありながら、意外と見落とされがちなポイントです。
- 擁壁には倒壊危険度の高いタイプがある(図2)
- 擁壁の法的な基準は年々強化されてきている
- 水抜き穴やひび割れなど、外観から確認できるサインがある(図1)
という3つの視点を持つだけで、物件選びの安心感は大きく変わります。少しでも気になる点があれば、遠慮なく私たち不動産のプロにご相談ください。一緒に、安心して長く住める住まい選びのお手伝いをいたします。
さて、上尾市は坂が少なく、高低差の少ないまちです。高い擁壁は少ないですが、注意しておきましょう。そんな土地に注文住宅を建てようとすると、おそらく多くのハウスメーカーから、擁壁をやり替える様意見されると思います。当該費用まで見込んだ上で計画する事が難しいなら、そもそも予算のオーバーの土地、ハウスメーカーということになりますね。残念だったと思うのでは無く、もともと対象外と考えた方が、その後のお探しもスムーズです。
参考資料
・公益社団法人 全日本不動産協会『月刊不動産』2026年5月号 特集記事
・国土交通省「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」
・建築基準法施行令第142条/宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法、令和7年6月1日施行)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の物件については専門家による現地調査・行政窓口への確認を必ず行ってください。






































